11/8 満月レター

      

こんにちは、MOONSOAPです。カーテンを開けると、朝露にキラキラ光る広葉樹たちが窓辺を明るくしてくれます。

深呼吸をして表に出ると、あんなに鮮やかだった百日紅は茶色の実になり、夜のうちに、狐が撒いた小さな小判のように、葉っぱが道ばたに散りばめられています。



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2.お知らせ
3.花葉月果(かようげっか)

Contents

1.MOON LETTER 


118日、夜83分に満月を迎えます。

この日は皆既月食でもあり、天王星食でもあります。

 

私のインド占星術では、天王星、冥王星、海王星のような外惑星は使わないのですが、皆既月食と天王星食が重なるのは、なんと4000年ぶりのことだそうで、天体のイベントとして考えてもすごく面白い惑星配置の日ですよね。

 

前回の新月と同じく天秤座に惑星集中がありますが、月は牡羊座に。

すべてが大きく変わっていって次の世界に行くんだな、と思える節目になりそうです。

 

古いもの、いらないものがもう終わり、新しい世界が始まる。

気持ちはもう、次に向かってる、みたいな。

 

世界そのものも変わりそうですが、それより、人として、個人として、その人の中のものが変わっていくのではないかな、と思います。インド占星術では、月食のときは、それを見ずに部屋で静かに瞑想しているのが良いとされているのですが、この月食のタイミングで瞑想して自分と深く向き合うというのもよさそうです。何か気づきが得られるかもしれません。

(でも、月食ってつい、気になって見てしまったりするんですけどね…)

 

この月食は、私にとっても来年以降どんな風に生きていきたいのか、どうありたいのか、考え方みたいなものが大きく変わる転換点になるんだろうなと思います。

 

※西洋占星術とインド占星術では春分点の度数が違うため、今回は西洋占星術では牡牛座の満月ですがインド占星術では牡羊座になります。


日本建国図(C)清水俊介先生。

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ゆきさんの占星術についてもっと知りたい方は、「hoshi-note」もご参考ください。


2.お知らせ
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3.『花葉月果(かようげっか)』 第二十六話
「そして父 〜勝手にしやがれ編」 ※軽井沢編は今回はお休みとなります。

 

Si vous naimez pas la mer, si vous naimez pas la montagne, si vous naimez pas la ville Allez vous faire foutre !

 

海が嫌いなら、山が嫌いなら、街が嫌いなら…、勝手にしやがれ!

 

----監督・脚本: ジャン=リュック・ゴダール『 À bout de souffle  勝手にしやがれ』、1960年、フランス


***

 

とある秋の晴れた日の東京で

愛媛から、月に一度上京してきている父と待ち合わせて

水餃子やさんでお昼を食べました。

ずっと行きたかった按田餃子さんというお店に、

珍しく待ち合わせよりも私が早く着いたため

30分並んで、父のために席を取りました。

表参道で別の用事を済ませてから来るという父は、大幅に遅れてきたため

その間、私はお先にどうぞといいながら何組ものお客さんを見送り、

スパイスの入った餃子屋さんの自家製コーラを買って飲みながら、


お店の前で日向ぼっこのように父を待ちました。

 

時間に正確な父が遅れるのは大変珍しく、

 

その日、私はほっとして、とてもご機嫌でした。


到着すると早々に、代々木の街を眺めながら父は


「東京はすごいな、お店が全部開いているな。もう向こうは、お店なんかシャッターが降りているところ

ばかりだぞ。」と言い

「ラゲーライスとはなんだ?ラゲーライスとは?」とメニューを見ながら言い

「この店はなんだ?やすだ餃子というのか? と店の中で大きな声で言い*

最後に店を出た後に


「美味しいか美味しく無いか、正直俺にはわからなかったな」と私に言いました。


相変わらず絶句することばかりでしたが、

念願の水餃子屋さんが、とても素晴らしかったのと、秋の美しい光の魔法のせいか

私にとって父と過ごす、生まれて初めてのほんわか楽しい時間でした。

***

父は生涯勤め上げた会社を定年退職し、


今は油絵を習ったり、ピアノを習ったりと


夢だった暮らしを田舎で実現しています。

***

翌月もお昼に誘われたので

今度は吉祥寺のまめ蔵というカレーやさんでランチをし

その後、リマスター版で上映しているゴダールの古い映画を一緒に観に行きました。

相変わらず父は

 

「豆まめカレーとは何だ?豆まめカレーとは?」と見知らぬメニューに対して好奇心と猜疑心を示し、

 

私が注文するのと同じメニューを注文し、

 

何も言わずに平らげました。


***

彼は昔、子どもだった私にとって、厳格な父でした。

勝手は許されませんでしたし、私の様々を調べあげ


やることなすこと全てに対して否定的でしたし、

悲観的な観測をもっとも重視する、リスク回避型の人間でした。

 

常に最悪の事態に備えて、現実を生きている父でした。

 

遊ぶこともなく、趣味もなく、友だち付き合いもなく、勤勉で真面目な人間でした。

 

愛媛の進学校を出て東京の大学に入り、大手銀行に就職し、30代で社宅を出て

、東京郊外に、小さな土地を買い、一軒家を建て、子供三人の教育費を稼ぎながらローンを払い、

60代で定年退職し退職金をもらい、しばらく海外旅行をした後、一人田舎に帰ったというのが、

私の知る限りの彼のライフジャーニーです。


***

映画館を出た後


「ヌーベルバーグというんだろ?」と父は私に言いました。

案の定


「お前はあの映画のどんなところがいいんだ?」と訊かれたので

「最後にベルモントが死ぬシーン」と適当に答えると

 

「そうだな、あれは死ぬべきだな」

と、倫理上の観点からの回答が返ってきて、私は思わず吹き出しました。*

そして


「ごめん、わたし若い頃あんな映画ばっかり見ていたから、こんなに頭がおかしい人間になってしまっ


たのだと思う。」と笑いながら父に言いました。


 

勝手にしやがれ、という映画が好きなのは


私が勝手にしたいと常々心底思っていたから。


それだけです。



***

父と一緒にいて、居心地の良い思いをしたことは過去一度もなかったし


言うことを素直にきいたことも一度もなかったけれど


(もちろん私は父に全力で反発してきたので、諍いの絶えない親子でした。)

 

私が結婚するときに


「お前は男を見る目がないな」

と父が言ったことをこの頃よく思い出して、笑ってしまいます。

 

***

駅で別れて、電車に乗ると早速、携帯電話のLINEが鳴り


翌月の上京スケジュールと共に「またランチや映画でも!」

というメッセージが届いていました。

大好きなあのフランソワ・トリュフォーの映画*がやっていたら

誘ってみよう、と思いました。



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*按田(あんだ)餃子

*映画「勝手にしやがれ」の中でジャン=ポール・ベルモンド演ずる主人公のミシェルは、車を盗み、警察官を射殺し、逃亡しながら男女問わず知り合いから金をくすねている。
*映画「大人は判ってくれない」。フランソワ・トリュフォーはヌーベルヴァークの旗手。


by 池田早紀 "Ayurveda for your life" 

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